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左綾だと柔らかい?



※ この記事はサイトを公開した直後に書き始めたまではよかったものの、未完成のまま長期間放置になっていたものです。最近 2年ぶりに読み返してみたら自分でも一瞬 『?』 と考え込んでしまいましたが、何とか調整できました。あんな画像までわざわざ作っていたのだから当時相当な意気込みで書いていたんでしょう…今より2歳若い私がここに居たのか orz (2006年2月25日)

(2010年1月10日 追記)
このページ内容について服飾業に携わるすずき様からメールを頂きました。ありがとうございます。
こちらに一部掲載させて頂きます。
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デニムに使われている糸は経(たていと)緯(よこいと)共にZ撚りが多いですよ。コレは左綾も右綾もなくZ撚りが圧倒的です。
綾の方向と撚り糸の方向が生地の顔を決定づけるに密接に関係している事は仰られている通りで、同じ方向の撚りでも左右違う方向の綾で生地の表情が異なります。
もっと細かく説明するとコレだけではないんですが、概ね仰られている事は正解と考えて頂いて良いですよ。
ちなみに、一般的には生地をできるだけ平滑でしなやかに仕上げるため、Z撚りなら左綾にすることが多いです。
つまりデニムは一般的な綾織と逆の織なんですね。
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それと、デニムを織る際に使われる糸は基本的には単糸であると考えて頂いて構わないとの事です。
Wikipedia のデニムの項にも右綾・左綾について書いてありますのでこちらもご覧ください。

このページももう一度よく考えながら書き直すのが望ましいのですが、今でも深く考えると混乱してくるので、ページ内容は初版のままで修正する事ができません (;´Д`) ごめんなさい。
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左綾だと柔らかい? 2006-02-25版

左綾デニムは柔らかいと言われます。「柔らかい物は柔らかいんだ」と言ってしまったらそれまでなんですが、「なぜ柔らかいのか」という事に疑問を持っている人も居るのではないでしょうか。私のない頭をフルに回転させてここに書いてみようと思います。

1・糸は撚ってあるもの

織物を作るために利用している糸と言う物は「繊維を撚(よ)る事で出来た物」です。糸などと一言で言うと1本の線をイメージしてしまいますが、その目でハッキリと確認できる太さの線を作り上げるために、更に細い無数の繊維が使われています。この最小単位の繊維の状態をも撚っているのかどうかは私にはわかりません。

撚り方にはS撚(右撚)、Z撚(左撚)と言う2つのパターンがあります。繊維を撚ってある目の走りかたがアルファベットのSとZに見えるためこう呼ばれます。こういう一般的ではない言葉に限って、読み仮名をふってくれないサイトが多いのがちょっと困り物ですが、前者を「えすより or えすねん」後者を「ぜっとより or ぜっとねん」と読んでみてはいかがでしょうか。これが正しいという保障は無いので発声しないに越した事はありません。文字なら何とでもごまかせます。私も発声した事は一度もありません(w

S撚糸 Z撚糸
S撚糸の図

撚りの目の走り方がSに見える。
上下逆さまにしてもこれは変わらない。
Z撚糸の図

撚りの目の走り方がZに見える。
こっちも同じ。逆さまでも変わらない。

このS撚やZ撚で、撚りをかける回数(巻きの回数)が少ない順に甘撚り(あまより)、中撚(ちゅうねん。普通撚や並撚りという言い方もあるそうです)、強撚(きょうねん)という分類がされます。巻きの回数が違うという事はテンションの掛かり方も違うわけで、これは糸のハリやコシ、そして強度にも影響を与えるものです。巻きが多いほど頑丈な糸になります。デニムを織るために使う糸は中撚〜強撚であると思われます。強撚糸(きょうねんし)と言えるほどの撚りをかけてある糸を使用した場合は「強撚糸を使用して〜○○○なジーンズ」という売り文句が付いたりもします。もちろん付いていなくても強撚糸を使用している事はあります。

さらに撚り姿による分類わけもあるのですが、ますますゴチャゴチャになるので書かないようにします。撚りをかける方法や手順などを含め、さらに突っ込んだ内容については専門サイトでお願いしたいと思います。

2・撚糸と綾目の相性

この撚ってある糸が今回の話の主役です。そしてこれはデニムの斜行現象の原因でもあります。現在は技術が進みスキュー加工(斜行防止加工)でこのよじれ現象を解消していますが、力織機で織り上げた当時のデニムや現在流通している復刻モデルは斜行現象が起きてしまいます。愛知県産業技術研究所 尾張繊維技術センターこのページの情報によると、この作用を撚トルクと言うそうです。

ここで糸の撚りをかけてある方向とデニムの綾目の相性の問題が出て来ます。しかし私たち一般消費者では「縦糸横糸どちらにS撚、Z撚を使うのか、それをどの割合で打ち込むのか。そしてS撚、Z撚どちらの糸が左右どちらの綾織物で目が詰まり易いのか」という事はわかりません。「その糸が強撚糸であるのか」などという事も含めてです。かと言って「わからない」で終わらせてしまってはこの文章を書いている意味がありません。

そこで一時的に『縦糸にS撚糸の割合が多い場合、左綾は目が詰まり易い』と仮定して話を進める事にします。「縦糸にS撚糸のみを使う」でも良いのですが、一応割合が多いという表現にしておきます。

ここから先は私の推測で物を言っている部分が多々あります。正しいか間違っているか判断し指摘してくれる人が周りにいないのです… 基本的に数学や物理が昔から苦手なので今から書く事が理論的にあり得るのかどうかも正直わかりません。素人が推測で書いて「専門家以外にはもっともらしく聞こえるように強引にこじつけている文章」という事を前提にして読んでください。回りくどい言い方をする事も多いので少々ややこしくなります。

まあ…ここまで読んでいる人が居るかすら疑問ですが(汗

目が詰まり易い。違う言い方をすれば緩みが無い綾織物という事です。こう仮定すると一般に流通している左綾デニムはZ撚糸の習性が顕著に出ているという事になります。通常の左綾デニムは右綾デニムと比べて穿いているうちに伸びて緩みやすい物であり、目が詰まっているとは考えにくいからです。

そうなると右綾デニムは「縦糸にZ撚糸を多く含む」という事になります。S撚糸で左綾の目が詰まり易いのであれば、右綾ではZ撚糸がこれと同じ習性を持つからです。これにより「縦糸はZ撚糸の割合が多いのが一般的」という事になります。右綾デニムはゴワゴワしていて目が詰まった綾織物です。流通しているデニムの殆どは右綾デニムです。あなたの手元にあるジーンズも余程のことがない限りは右綾のはずです。ジーンズを穿かないで正面から眺めた時に、斜めに走っている線が下の図の赤青黄緑のように左下に流れている場合それは右綾になります。この図は生地の一部を数十倍に拡大した物です。赤青黄緑にあたる部分も実際のサイズは1ミリ程度です。

試しにティッシュを一枚用意して何度かに折って細い状態にし、上を右手、下を左手でつまんで右手首を内側に巻き込むほう、つまり左巻きになるようにひねってください。それがZ撚の状態です。そのティッシュは右にねじると解けます。逆に左にひねり続ければ最初ひねった状態よりも更に固く引き締まります。着用しているうちに多少の伸びは出てしまいますが、この糸が引き締まっている状態を出来るだけ維持できれば、その生地はハリのある強い生地であると言えます。

織物というのは必ず縦糸と横糸で構成されています。糸を打ち込んで「糸が糸を押さえつけている状態」を作っている訳です。そこに糸同士の摩擦が発生するため、先ほど手で押さえつけてティッシュ(糸)を解いたり締めたりした作業を、今度は糸同士で勝手に行なう状態になります。これが常に中立〜左にひねられるように作用しているのが右綾デニムです。上のほうで書いた斜行現象も、右綾デニムの場合は正面から見て生地が左側にねじれるようになっています。これは穿いている本人からすると右側という事です。

右綾の斜行 (超拡大図)
ごく一般的なゴワゴワした右綾デニムの表面を拡大した図。これはジーンズを穿かずに正面から見た状態の絵になります。

今までの話の流れで、このような糸の打ち込み方という事にしてあります。縦糸にZ撚糸、横糸はとりあえずS撚糸にしてあります。この図の場合は常に2:1の割合で縦糸、横糸のどちらかが見えています。デニムの表が青いのは縦糸(染糸)が2であり、1の横糸(生成り)よりも多く見えているためです。裏返せすと横糸(生成り)が2になり縦糸が1になるため白っぽく見えます。この絵では2対1にしてありますが、デニムの基本は縦糸と横糸を3対1の割合で通す事だそうです。

この絵を眺めている限り、どう考えても摩擦の影響で左にひねろうとする力が働くとは思えませんが、そういう事にしておいてもらわないと話が合わなくなり、私が困ってしまいます(笑)

左綾が柔らかい理由は糸と綾目の相性の問題ではないかなと考えます。上で書いたような特性の「縦糸(Z撚)」で左綾目の織物を織った場合は嫌でも柔らかい物になってしまうのです。Z撚糸とS撚糸を入れ替えてしまえば「ゴワゴワした左綾」になります。当然これと同じ理屈で「柔らかい右綾」を織り上げる事が可能です。ゴワゴワした左綾の話は私は聞いた事がありませんが、柔らかい右綾デニムというのは実在するらしいですから。もちろん柔らかいと言っても、ライトオンスだとか、液体アンモニア加工を施しているわけではありません。14oz 以上のデニムです。店で聞いただけなのでその商品を紹介できないのが惜しい。

Z撚糸とS撚糸の両方を撚り合わせる事でトルクを相殺する双糸(そうし)も存在しますが、どのような組み合わせの双糸にしても双糸には双糸の特徴があるそうです。ですので極端な撚トルクの問題は解消できても、双糸の特徴が綾目に対して何らかの形で影響を与えると思います。どのような糸を使ったとしてもそれが撚って作られた物である以上、元に戻ろうとする作用が働くはずですからね。これを何十回も繰り返して物凄い太い糸になったとしても、最終的な外見はS撚かZ撚のどちらかしかありませんし。

左綾が柔らかい理由を考えた事がある人は人によって話の進め方に違いはあれど、最終的に糸と綾目の相性の事を話すと思います。「左綾だけ薬品に漬け込んで柔らかくしている」とか「業者の気まぐれで柔らかくなる」などと言う人はさすがに居ないでしょう。

以前、とあるジーンズショップの店主にも「左綾が柔らかいのは何故なんでしょうね?」と質問した事がありますが、返ってきた答えはやはり「糸の撚りが影響してるだろうね」でした。「それを逆にしたら左綾と右綾の特性は入れ替わるんじゃないかな」とも言っていました。あの人も私と同じで「仮にだよ。仮に。」と何回も言っていました。あの気持ちは良くわかります。やはり繊維産業従事者でもない限り、正しくこれを説明する事は難しいですね。私もその業界に関わった事は一度もない人間です。

まとまりが無くてわかりづらい文章ですが、何となく言いたい事は伝わったでしょうか…?私がいわゆるジーンズマニアとは違った目線でものを見ている、理屈っぽい変わり者という事しか伝わらなかったかもしれません  orz

2006-02-25 記



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